○介護保険による福祉用具貸与と補装具給付制度との適用関係について
(平成一二年一二月二五日)
(障企第六四号)
(都道府県・指定都市・中核市障害福祉主管部(局)長あて厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長通知) 標記については、「介護保険制度と障害者施策との適用関係等について」(平成一二年三月二四日障企第一六号、障障第八号障害保健福祉部企画課長、同障害福祉課長連名通知)により示しているところであるが、その取扱いについて地方公共団体からの照会が寄せられていることから、その留意点等について、下記のとおり示すので、内容御了知の上、管下市町村及び関係機関等に周知方御配慮願いたい。
一 基本的事項 (一) 六五歳以上(介護保険法(平成九年法律第一二三号)第七条第三項第二号に規定する特定疾病による場合は、四〇歳以上六五歳未満)の身体障害者(以下「高齢障害者等」という。)については、介護保険で貸与される福祉用具と身体障害者福祉法で給付される補装具において共通する種目は、介護保険から貸与を受けることが基本となるので、補装具としては、原則として給付しない。 したがって、高齢障害者等に対して適切に補装具を給付する上で当該障害者等の要介護状態の把握を行うことが必要となるので、高齢障害者等が補装具の給付を受けようとする場合は、介護保険制度の趣旨や介護保険制度と身体障害者施策との関係について十分説明し、介護保険法に基づく要介護認定又は要支援認定(以下「要介護認定等」という。)申請を行うよう、周知徹底を図られたいこと。

(二) 介護保険で貸与される福祉用具の種目と共通する補装具は、車いす、電動車いす、歩行器、歩行補助つえであり、これらの種目は介護保険の保険給付として貸与されることとなる。 しかしながら、介護保険で貸与される福祉用具は、通常は標準的な既製品の中から選択することになるため、身体状況等からこれら既製品では対応できない場合もある。このため、医師の意見書や身体障害者更生相談所の判定(以下「更生相談所の判定等」という。)により障害の状況に合わせ個別に製作する必要があると判断される高齢障害者等については、これらの種目についても、身体障害者福祉法に基づく補装具として給付することができること。

二 留意事項 両制度の適用に当たって、高齢障害者等に混乱が生じることのないよう次の点に留意するとともに、介護保険担当部署と密接な連携を図ること。

(一) 介護保険で要介護認定等された在宅の身体障害者については、介護サービス計画(ケアプラン)において、まず、介護保険の対象となる福祉用具の中から選択することを検討する。 次に、身体状況や補装具の利用実態等からみて明らかに介護保険の対象となる福祉用具で対応できない又は当該福祉用具で対応すべきか否か明確でなく、医学的判断を求めることが適当と判断される場合には、高齢障害者等本人は補装具の給付申請を行う。 申請を受理した市町村は、更生相談所の判定等に基づき、その要否を検討するものとする。

(二) 介護保険の福祉用具と共通する補装具を希望する高齢障害者等が要介護認定等の申請を行っておらず、当該補装具の給付以外のサービス利用を希望していない場合であっても、上記の趣旨を説明し、要介護認定等申請を行うよう本人に理解を求めること。 ただし、これらの者が身体の状況等からみて明らかに既製品では対応できず、オーダーメイド等により個別に製作する必要があると判断される者である場合には、補装具給付制度において、更生相談所の判定等に基づき、その要否の検討を行って差し支えないこと。

(三) 上記(一)又は(二)により補装具給付制度において要否を検討した結果、介護保険で貸与される福祉用具で対応可能とされた場合は、補装具の給付は行わず、介護保険制度により福祉用具の貸与を受けることとなるため、申請者に対し予めこの旨説明しておくこと。

(四) 補装具は、失われた身体機能の補完・代償という役割を果たすことから、介護保険で要介護認定等されなかった高齢障害者等が補装具の給付を希望する場合には、その者の身体状況や補装具の利用状況等を勘案し、その必要性等について補装具給付制度において改めて判断するものとする。

(五) 介護保険により貸与された福祉用具を使用していた障害者の身体状況が変化し、当該福祉用具を利用できず、補装具が必要となった場合には、補装具給付制度により対応できるものとする。 この場合でも、更生相談所の判定等に基づき必要性を判断すること。

(六) 既に所有している補装具の修理及び再交付については、次のとおり取り扱うこと。

@ 当該補装具の交付を受けてから耐用年数が経過するまでの間は、補装具給付制度で修理を行うことができる。
A 当該補装具が修理不能となったときは、補装具の交付を受けるときと同様の考え方とする。 なお、当該補装具を所有している間に、介護保険で同一種目の福祉用具の貸与を受けた場合も、@と同様に取り扱うこととするが、介護保険の福祉用具で対応できる者であるので、当該補装具の再交付は行わない。

(七) 補装具の交付又は介護保険の福祉用具貸与等によって現に車いすを使用している者が身体状況等から車いす付属品が必要となった場合は、介護保険により当該付属品を貸与することができるものであること(当該付属品が介護保険の対象となるものに限る。)。 介護保険の対象とならない付属品を希望する場合は、障害の状況等から真に必要か否かについて、補装具給付制度においてその必要性を判断すること。

(八) 介護保険で定める介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設に入所している者については、福祉用具の貸与は行わないこととされている。 ただし、身体の状況等から施設が備える既製品の福祉用具では対応できず、身体状況に合わせ個別に製作し使用する必要がある場合は、補装具給付制度において、その要否を検討のうえ給付することができること。 また、障害者施設入所者については、介護保険の福祉用具は貸与されないため、従前どおり障害者施策により対応するものであること。

(九) 介護保険の福祉用具貸与の対象となる福祉用具は、平成一一年三月三一日厚生省告示第九三号及び平成一二年一月三一日老企第三四号老人保健福祉局企画課長通知に該当するものであり、また、身体障害者施策における補装具は、昭和四八年六月一六日厚生省告示第一七一号に該当するものであるので、当該福祉用具の範囲等について十分理解するとともに、利用者に対する情報提供に努められたい。